みなさん、こんにちは!
首都圏の鉄道を利用していると列車が引っ切り無しに来るので、5分でも遅れようものなら若干イラっとしてしまう現代社会。
15分間隔の路線でさえ、本数が少ないと感じてしまうこともあります。
しかし、いろいろな事情で、今日も明日も明後日も列車が来ない長期不通路線があります。
鉄道情報インターネットサイト「鉄道コム」さんが、長期不通路線を路線図にまとめてくれていたので見てみたら、その数に驚きました。
全国でなんと13路線!
不通となった理由は、すべて自然災害です。
各路線を簡単に見てみましょう。
- 2011年7月の豪雨による被害
- 2016年台風10号による被害
- 2016年熊本地震による被害
- 2017年7月豪雨による被害
- 2019年台風19号による被害
- 2020年7月の継続的な大雨による被害
- 2020年12月大雪による被害
- 最後に
2011年7月の豪雨による被害
「平成23年7月新潟・福島豪雨」と呼ばれる集中豪雨で、新潟県下越、中越地方および福島県会津地方で被害が出て、4名の死者が出ました。
JR只見線(会津川口駅~只見駅間)
只見線は、福島県の会津若松駅と新潟県の小出駅を結ぶ路線です。
鶴ヶ城や白虎隊で有名な会津若松駅と西若松駅の間では会津鉄道からの列車が乗り入れるほか、只見川を中心としたJR屈指の絶景路線としても有名です。
この豪雨により、複数個所で鉄橋の崩落や路盤の流出の被害を受けました。
翌年に一部の区間が復旧しましたが、現在も会津川口駅~只見駅間は不通となっており、代行バスによる運行が行われています。
一時は工事費が100億円レベルかつ工期も4年かかることなどから廃線の危機にありましたが、福島県や地元自治体の強い想いで、鉄道として復活させることが決まっています。
全体としては黒字のJR東日本にも国の補助金が出せるように法改正を実現したことや、復旧した橋梁などは自治体が保有し、JR側に損失が出ないような金額で貸し付けるスキームが整ったことにより実現しました。
只見線はもともとかなりの赤字路線ではありますが、豪雪地帯の沿線住民にとっては貴重な他地域への足として、新緑や紅葉を演出するエンターテイナー路線として存続できることは、非常に価値のあることだと思います。
2015年1月強風・高波による被害
JR日高本線(鵡川駅~様似駅)
JR日高本線は、JR北海道の路線で、フェリーターミナルがある苫小牧駅から日高山脈の西側を海岸線に沿って走り、様似駅まで運転されています。
様似駅からバスでさらに南下すれば、襟裳岬です。
始発駅の苫小牧駅から4つ目の鵡川(むかわ)駅より南の区間は表題の高波で盛土が流出、その後も度重なる台風などの被害で路盤の流出が続き、復旧費用は86億円にのぼります。
さらに、今後10年間で土木構造物の老朽化対策に53億円が必要と見られ、JR北海道は「抜本的な海岸保全に係る費用を負担することは極めて困難」とし、地元自治体と調整のうえ、鵡川駅~様似間の廃止を決意しました。
廃止日は2021年4月1日で、今後はバス路線へ転換されます。
2016年台風10号による被害
この年の台風10号は、アメリカの環礁であるウェーク島で発生したのち、海上で2回のUターンを経て暴風域を伴う非常に強い台風に成長したのち、岩手県大船渡市付近に上陸しました。死者は26名。特に北海道では、この台風を含め1週間で4つの台風の被害を受け、交通網が大ダメージを受けました。
JR根室本線(東鹿越駅~新得駅間)
根室本線はJR北海道の路線で、札幌駅と旭川駅の間にある滝川駅から富良野駅、帯広駅、釧路駅を通って東の果て根室駅まで至る443.8kmに渡る長大路線です。記載の通り北海道の魅力がぎっしりと詰まった路線です。しかし、経営難に陥っているJR北海道による「自社単独では維持することが困難な路線」として、多くの区間がエントリーされています。
不通となっているこの区間は、駅数としてはわずか4駅ですが、営業キロはなんと41.5kmあります。この不通区間も、「自社単独では維持することが困難な路線」の区間に入っており、JR北海道としてはバス転換を希望している一方、富良野市が鉄道存続を強く希望しており、国土交通大臣も支援の考えを示しています。
この区間の被害は、斜面崩壊、土砂流入、護岸流出などで、工事費も相当かかる見込みであることと、上記事情により復旧工事は行われていません。
JR北海道の「自社単独で維持することが困難な路線」とされているほかの路線と含めて深刻に考えています。
2016年熊本地震による被害
熊本地震は、2016年4月14日に発生した最大震度7を2回記録した大地震です。死者は273人にのぼりました。熊本城の堀や石垣のほか築城当時から残る重要文化財の櫓が倒壊した映像は記憶に残っている方も多いと思います。
南阿蘇鉄道高森線(立野駅~中松駅)
南阿蘇鉄道は、豊肥本線立野駅から阿蘇の外輪山を走り高森駅まで至る路線です。かつて水面からの高さが日本一だった第一白川橋梁をはじめとした絶景が人気の路線で、トロッコ列車の「ゆうすげ号」も活躍していました。
熊本地震では、各所トンネルのほか第一白川橋梁を含めた橋梁が崩落。南阿蘇鉄道ならではの情報発信やイベント開催、他の第3セクター鉄道と連携した施策の実行を懸命に行ってきました。復旧費用は約70億円とされていますが、2023年夏ごろの復旧を目指しています。
2017年7月豪雨による被害
この年の豪雨は「平成29年7月九州北部豪雨」と呼ばる7月5日から6日にかけた発生した集中豪雨です。桂川、彦山川、大肥川、花月川など多くの河川が氾濫し、土砂崩れとそれによる倒木などが流れよせ、死者は40人にのぼりました。
JR日田彦山線(添田駅~夜明駅)
日田彦山線は、福岡県北九州市の城野(じょうの)駅から福智山地を越え、大分県の夜明駅までを走る路線です。夜明駅は、同じく豪雨等の被害を受けている久大本線との接続駅です。
被害を受けた添田駅~夜明駅間は彦山川沿いを走り、橋梁の傾き・変形・流出、土砂流入、盛土流出が相次ぎました。現在はバスによる代行輸送が行われています。JR九州は悲願の株式上場を果たしたこともあり、赤字路線への対策が強く求められています。日田彦山線のこの区間はもともとかなりの赤字路線。鉄道以外の復旧を望むJR九州と鉄道での復旧を望む地元自治体で長らく対立が続いていましたが、鉄道で復旧した場合の自治体負担も相当大きくなることなどから、線路跡地の一部をバス専用道として活用し、BRT(バス高速輸送)で復旧することで合意されています。
2019年台風19号による被害
この年の台風19号は、「令和元年東日本台風」と呼ばれ、首都圏を含めて甚大な被害を受け、死者は105人にものぼった。千曲川の氾濫による北陸新幹線車両基地の水没、箱根登山電車の土砂崩れによる運休、多摩川の氾濫などによる武蔵小杉のタワーマンションの浸水などショッキングな被害映像がテレビを独占しました。
JR水郡線(袋田駅~常陸大子駅)
水郡線は、JR東日本の路線で、茨城県の水戸駅から福島県の安積永盛駅を結んでおり、安積永盛駅から東北本線の郡山駅まで足を伸ばしています。久慈川に沿って走る美しい車窓にちなんで、「奥久慈清流ライン」の愛称があります。また、沿線には袋田の滝や奥久慈温泉郷などがあり、季節により混雑する列車があります。
被害を受けたのは、まさに袋田の滝の最寄り駅の袋田駅からとなりの常陸大子駅間。この区間の久慈川にかかる鉄橋が流出し、現在復旧工事が行われており、2021年3月に全線で運転再開する見込みとなっています。
上田電鉄別所線(上田駅~城下駅)
上田電鉄は、長野県の新幹線停車駅上田駅から、別所温泉駅を結ぶ東急グループの鉄道です。真田氏の居城として有名な上田城がそびえる上田市市街地を中心に丸子線など複数路線が走っていましたが、現在は別所線のみ。映画「サマーウォーズ」にも登場した鉄道です。
被害は、始発駅の上田駅~城下駅間の千曲川に架かる鉄橋の流出。存在感のある赤いトラス橋で人気があったため、同じような赤い鉄橋が2021年3月に復旧し、全線で運転を再開する予定です。
2020年7月の継続的な大雨による被害
「令和2年7月豪雨」と呼ばれ、7月中ほぼ1か月通して雨天が続いた最も記憶に新しい豪雨かと思います。被害の中心は熊本県などの九州地方でしたが、中部地方でも岐阜県の飛騨川が氾濫するなどの被害が出て、死者は82名にのぼりました。
大井川鉄道大井川本線(下泉駅~千頭駅)
大井川鉄道大井川鉄道は、静岡県の金谷駅から千頭駅を結ぶ路線です。かつて近鉄や南海、東急などで走っていた車両が第2の人生を送っており、きかんしゃトーマスやその仲間たちのSLが走る子供たちにも大人気の路線です。千頭駅から先の井川線は、アプト式列車と呼ばれ、レールとレールの間にある歯車を使って急こう配を登っていく珍しい路線です。
この大雨による被害で沿線を流れる大井川の護岸が損傷し、一部区間で不通となりましたが、8月28日に仮復旧しました。現在の不通は本復旧に向けた工事を行うのが目的で、2021年3月20日に運転を再開する予定です。工事中は代行バスが運転されます。
叡山電鉄鞍馬線(市原駅~鞍馬駅)
叡山電鉄は京都府を走る観光路線で、京阪電車の終点出町柳駅から比叡山の京都側の玄関口である八瀬比叡山口駅に向かう叡山本線と、途中の宝ヶ池駅から分かれて、京都の奥座敷貴船口駅を通り、鞍馬天狗で有名な鞍馬駅まで走る鞍馬線があります。鞍馬線の列車も出町柳駅から直通運転を行っており、沿線の「もみじのトンネル」や「きらら」「ひえい」など追加料金なしで乗れる観光列車が人気です。
この大雨により、沿線で土砂崩れが発生し、上記区間で運休となっています。市原駅からは京都バスに乗り換えることで貴船や鞍馬寺に行くことができます。ただし、代行輸送扱いではないので、叡山電車のフリー切符を持っていてもバス運賃がかかります。ただし、不通区間の定期券を持っていれば、振替輸送としてバス運賃無しで乗ることが出来ます。
このエリアは日本人のみならず外国人観光客にも人気のエリアですので、コロナパンデミックが落ち着くころには何とか復旧してほしいと思っています。
JR久大本線(豊後森駅~庄内駅)
久大本線はJR九州の路線で、福岡県の久留米駅から大分県の大分駅を結んでいます。途中には温泉地として有名な由布院駅があることから、「ゆふ高原線」の愛称があります。観光列車の先駆けともいえる特急ゆふいんの森が走る路線としても有名です。
この大雨で、豊後中村駅~野矢駅間の橋梁が流出したほか、橋脚の傾斜、トンネルや線路への土砂の流出などの被害を受けました。一部区間では復旧しましたが、上記不通区間には旧豊後森機関庫がある豊後森駅と温泉地由布院駅を含むため、早期復旧が望まれます。JR九州によると、2020年度中の復旧を目指しているということです。
JR肥薩線(八代駅~吉松駅)
肥薩線もJR九州の路線で、、熊本県の八代駅から鹿児島県の隼人駅を走っています。球磨川に沿った絶景が」魅力の路線で、SL人吉号や、特急「かわせみ・やませみ」「いさぶろう・しんぺい」「はやとの風」など多数の観光列車が走っています。
この大雨で、球磨川が氾濫。球磨川と並走する線路や橋梁のほとんどすべてが流されたといっても過言ではないのではないでしょうか?鉄道ジャーナル2021年1月号でその被害状況が報じられましたが、まさに地獄絵図です。鉄道マニアとしてここまで絶望したのは初めてです。JR九州の青柳社長によれば、被害額は100億円を超え、「造り直すのに等しい」と指摘しています。日本三大車窓に数えられるだけに、沿線自治体や政府との今後の協議が注目されます。
くま川鉄道湯前線(全線)
くま川鉄道は、上記肥薩線の不通区間の途中駅人吉駅と接続する人吉温泉駅から湯前(ゆのまえ)駅を結ぶ路線です。観光列車「田園シンフォニー」が人気です。
この大雨による被害は、肥薩線と同様球磨川に架かる橋梁の流出などで、全線が運休となっています。日本全国から応援の声が届いている一方、人的リソースも少ない会社であるため、グッズ購入に関しては人の手が回らず、願わくば寄付をと悲鳴を上げています。皆様、ぜひご協力をお願いします。
2020年12月大雪による被害
まさに目下続いている大雪。北陸地方や東北地方で多くの被害が伝えられていますが、山陰地方でも被害が出ています。
JR木次線(出雲横田駅~備後落合駅)
木次線(きすきせん)は、島根県の宍道駅から中国山地の山中にある備後落合駅を結ぶ路線です。閑散路線として知られていますが、奥出雲おろち号というトロッコ列車も走っています。
木次線はこの大雪で全線運休していましたが、2021年1月2日に宍道駅~出雲横田駅間で運転を再開しました。残る出雲横田駅~備後落合駅は除雪や点検を行うため、当面運休する運びとなり、バスによる代行輸送が行われます。
最後に
以上、13路線。よもやよもや・・・、こんなにあるとは。
各事例を見てみると、前向きに復旧へ進んでいる路線、思うように進まない路線、残念ながら廃止が決まった路線など状況は様々です。
要因はもともとの赤字経営に自然災害が追い打ちをかけていると言えるでしょう。今後も地球温暖化の進行などにより異常気象は増えていくと見られ、地方鉄道の戦いは一層厳しさを増していくでしょう。
世界共通の目標である持続可能な開発目標SDGs。この17のゴールの中では、、
自然災害に対する強靭性の強化を「13.気候変動に具体的な対策を」の中で求めているほか、地方鉄道の経営基盤の安定につながる地方創生に資する目標を「8.働きがいも経済成長も」や「11.住み続けられるまちづくりを」などで謳っています。
SDGsは世界共通の目標ですから、日本の地方鉄道のこの課題を他人事と思わずに、日本の都市部の人々や企業のみならず、世界中のチャレンジャーが参入してくれることを願っています。また、その1人に僕もなりたいと思います。