みなさん、こんにちは。
北総鉄道は、全線で運賃を値下げすると発表しました。
北総鉄道の運賃は高額であることで知られ、以前より訴訟も含めて問題になっていましたが、2021年10月に値下げの方向性がニュースになり、今般、内容が正式にリリースされたものです。
北総鉄道は京成スカイライナーも走っており、運賃なスキームはやや複雑ですので、10月に執筆した解説も合わせてご覧ください。
今回は、値下げな詳しい内容と、その裏に隠れた北総鉄道の危機感と戦略を解説します。
smallanthussonchifolius.hatenablog.com
<目次>
北総鉄道と値下げをざっくり解説
北総鉄道は、京成本線の京成高砂駅から、千葉ニュータウンを通り、印旛日本医大駅までの路線で、そのうち小室駅から印旛日本医大駅までは、千葉ニュータウン鉄道から施設を借りて運営しています。
また、京成スカイライナーやアクセス特急は、京成成田空港線として走っていて、これらの列車に対しては、北総鉄道が京成電鉄に施設を貸していることになっています。
詳しくは、冒頭で紹介した以前の記事に記載しています。
今回値下げするのは、北総線内の京成高砂から印旛日本医大駅までの区間となります。
値下げ幅は、全体で15.4%。
今と比べて、常に15%引きということになるので、かなり思い切った値下げという印象を受けます。
切符の運賃は、初乗りが210円から190円になり、区間によっては100円安くなる区間もあります。
通勤定期券は、毎日乗った時の切符の運賃の合計に割引率をかけて計算するので、こちらも同様に値下げとなります。
そして、今回の目玉は、通学定期券の値下げです!
目玉は通学定期券の値下げ〜特別に成田空港駅からまでも!
北総線の値下げの中でも、通学定期券は大幅な値下げを行います。
値下げ幅は、なんと!64.7%!!
例えば、京成高砂駅~印西牧の原駅間の通学定期券は、
・1か月定期 14,990円⇒ 4,990円(△10.000円)
・3か月定期 80,950円⇒26,950円(△54,000円)
と、なります。
1か月で万単位での値下げとなるのは、驚愕ですね。
通学定期券の運賃は、通勤定期券と同様に、毎日乗った時の運賃の合計額に割引率を掛けて計算します。
通学定期券の運賃が、切符の運賃以上に値下げになったいるのは、割引率を引き下げたためです。
例えば、京成高砂駅~印西牧の原駅の1か月通学定期で考えると、
【これまで】
通学定期券・・・・・・・14,990円
切符810円×往復×30日・・48,600円
(48,600円-14,990円)÷48,600円=69.2%
【これから】
通学定期券・・・・・・・ 4,990円
切符770円×往復×30日・・46,200円
(46,200円-4,990円)÷46,200円=89.2%
となり、割引率は9割近く。
沿線の学生さんは、4日間学校に行けばもとが取れる計算になります。
(毎週東京に遊びに行くだけでもOK)
子育て世帯には、ありがたいですね。
成田空港までの運賃はどうなるの?
スカイライナーが通る区間の値下げということで、気になるのはスカイライナーに乗車した時の運賃。
スカイライナーは、京成成田空港線ということになっているので、北総鉄道の裁量外となり、運賃は据え置きとなります。
京成成田空港線のうち、北総線内のいくつかの駅に停車するアクセス特急は、北総線内の利用に限り、北総線と平仄を合わせての値下げとなります。
やっぱり会社は潰れるのでは?
さて、冒頭紹介した記事にも書きましたが、鉄道業界は新型コロナウィルスの影響を受けて、経営が苦しい状況です。
そんな中で値下げを行って会社は潰れないのか心配です。
北総鉄道の場合は、もともと累積赤字が大きく、現在の高い運賃で少しずつこれを解消してきているところです。
ここでいたずらに値下げをして、再び累積赤字が広がってはいままでの努力が水の泡です。
2020年度の北総鉄道の運賃収入は、94億7,100万円なので、単純計算で全体の値下げ率15.4%を掛けると約14億5,000万円ほど減収することになります。
2020年度の最終利益は、12億6,100万円だったので、輸送人員やコストが変わらなければ、再び赤字に転落になってしまいます。
しかし、それを知ってか知らずか、沿線の市長からは称賛の声が上がっています。
笠井喜久雄白井市長「通学定期の値下げ幅は予想以上。よく頑張ってくれた。」
板倉正直印西市長 「普通運賃も、現状で考えられる最大限の値下げをしていただいたと思う。」
北総鉄道の戦略と、責任重大な沿線市長
北総鉄道は、値下げに関して、「コロナ禍でテレワークが進む中、子育て世帯や若者の沿線流入を促進したい。」と話しています。
北総線沿線は、京成線や都営浅草線への直通運転で都心方面への利便性は低くありませんから、通学定期を大幅に値下げすることで、子育て世帯の家計負担を減らして、安心して沿線で暮らせるようにする狙いがあります。
これにより、値下げをしてもそれ以上に輸送人員を増やすことで、赤字の回避を図ります。
しかし、僕たちは、都心への利便性や鉄道の運賃水準だけで住む町を判断しません。
当然、街の住みやすさや雰囲気、災害への強さなどいろいろな要素を総合的に判断します。
無視できない事実として、千葉県内で人口の増加率は千葉ニュータウンよりも都心に近い流山市で、つくばエクスプレスの開業効果と、流山おおたかの森など街のブランディングにも積極的です。
一方、利便性で若干引けを取る千葉ニュータウンは、印西市は2028年まで人口が増加する予測がありますが、白井市は人口減少が始まっています。
テレワークの普及により、都心への利便性よりも、その街自身の住みやすさのウェイトが判断要素として大きくなっています。
北総鉄道としては、「一旦」、やることはやりましたし、あとは、自治体主導のもと、「選ばれる街」として、しっかりと人口を下支えすることが求められます。
それに失敗すれば、千葉ニュータウンも、北総鉄道も共倒れということになってしまいます。
人口減少で再び値上げをすることにならないよう、運賃の次は「まちづくり」への期待と責任が高まります。
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