しかし、交通系ICカードを導入するには、端末を整えないといけませんし、加盟店手数料がランニングコストで発生するので、ローカル鉄道ではなかなか導入が難しいようです。
キャッシュレスを徹底的に行っていけば、釣銭準備金を用意する人件費、銀行に支払う両替手数料、警備会社に支払う現金輸送コストが無くなり、トータルではコスト削減につながるので、ぜひ私たちも頑張って現金からの脱却を進めていきたいものです。
ちなみに、私ヤーコンは完全キャッシュレスなので現金を持ち歩いていません。
そんな中での長野電鉄のお話です。
<目次>
1,長野電鉄とは・・?
長野電鉄は、北陸新幹線も停まる長野駅の地下ホームから出ているローカル鉄道です。
長野駅を出ると市街地の地下を走り、善光寺の最寄り駅善光寺下駅などを通ります。
栗菓子の小布施堂で有名な小布施駅などを通り、菅平高原に近く温泉地でもある湯田中駅が終点です。
車両は特急用に元成田エクスプレスのスノーモンキー号、元小田急ロマンスカーHiSEのゆけむり号が走り、普通列車でも元東急8500系や元日比谷線3000系や03系など懐かしい列車が信州五岳を望みコトコト走る魅力あふれる路線です。
2,長野電鉄は社長が変わりました。
そんな長野電鉄は、2023年6月に26年ぶりに社長が交代し、八十二銀行出身の久保田敏之氏が就任しました。
26年間も社長が変わらなかったなんて、ガバナンスの視点では正直どうかと思います。
久保田氏は、日本経済新聞地方版の取材に応じ、インバウンド需要の取り込みに意気込みを語ります。
また、新札に対応した新型自動券売機を導入するにあたっては、Suicaなどの交通系ICカード、QRコード、クレジットカード決済に対応した機器を導入を進めると言います。
海外ではキャッシュレスはもはや当たり前で、外国人旅行者からは日本の現金主義に批判の声が上がっており、インバウンド対応としても必要な施策と言えます。
3,長野電鉄には自動改札機が無いです。
ただ、残念なことに長野電鉄には自動改札機は無く、改札は昔懐かしい有人改札。
ということで、決済はキャッシュレスになっても、自動券売機で切符を購入するという作業はどうしても必要になってしまいます。
交通系ICカードやクレジットカードによる「タッチアンドゴー」にはやはり端末導入に向けたイニシャルコストの壁が立ちはだかります。
それを逆手に取るわけではありませんが、長野電鉄では定期的に子ども無料デーを実施していて、有人改札で無料チケット(特急も無料!)を配布するというアナログな楽しい仕掛けができていたりします。
DXという観点では、例えばRYDEパスといったデジタルチケットなども上手に展開していくと、キャッシュレスだけでなくペーパーレスも進みますし、インバウンドの受けも良さそうです。
長野周辺そのものは外国人旅行者の人気も高いエリアなので、県内の観光も競争が激しい状況にあります。
そこに敢えて長野電鉄沿線に来てもらうという視点では、八十二銀行にも融資を頑張っていただいて、DXへの思い切った投資は必要条件とも言えます。
4,交通系ICカードは本当にオトクなのか。
交通系ICカードは端末導入のイニシャルコストに加えて、加盟店手数料として取扱金額の約2%がランニングコストとして発生します。
PayPayなどのQRコード決済も手数料は約2%程度だそうで、交通系ICカードとそれほど変わりません。
ただし、QRコード決済は端末導入のイニシャルコストが比較的安いので、コスト面では最も有利な決済手段です。
なお、クレジットカード決済は、専用の古い通信システム基盤の影響などで、手数料が約3%と事業者には辛い決済手段だそうです。
インバウンドの戻りに期待が高まる昨今ですが、インバウンドに限らず旅行者需要の取り込みは、いかにリピーターになってもらうかが重要です。
沿線に魅力があっても、DXやキャッシュレスが出来ていないばっかりに敬遠されてしまうのは、とてももったいないことです。
銀行出身の新社長ですし、ながでんグループはバス事業や不動産事業など幅広い事業を営む「地元の名士」でもあるので、聖域なく積極的なDXに期待したいと思います。